カテゴリー「生き物の名前」の記事

2015年6月24日 (水)

雑魚オブ雑魚、オイカワの唐揚げ

そろそろ婚姻色がいい具合に乗る頃と見て、オイカワを捕りに行ってきました。

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川を覗くといっぱい姿は見えるんですが、いざタモで捕るとなると大変!
すばしっこすぎます。

夜に狙えば楽勝なんですが、それではこの体色を上手く撮影できない。

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とても綺麗な魚なのですが、ここまで鮮やかなのは繁殖期であるこの季節だけ。
他の季節は割りと地味で、カワムツと混同されることも。
ウグイやカワムツなどといっしょくたに「ハヤ」とか「ジャミ」とか「ザコ」と呼ばれる魚でもあります。

実際、この魚の学名はつい最近まで「Zacco platypus」でした(現在はハス属に編入され、学名は「Opsariichthys platypus」になっています)。

ザッコ!
属名がまんま「ザコ」だったんです。
もちろん語源も日本語の「雑魚」。
この雑魚という呼び名は元々そこまでネガティブな意味合いではなく、単に「小魚」を表すものだったのでしょう。

それが「取るに足らないもの」という意味合いを強めて転用されはじめたため、このオイカワのネーミングもなんだか可哀想な印象に…。


見ての通り、いい魚なんですけどね。


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このオイカワ、もちろん食べられます。
においが気になるという人もいますが、捕ってすぐに処理をすればたいてい問題になりません。
迅速な下処理の重要さはこの手の川魚全般に言えることですが…。

特に、唐揚げなどの揚げ物にしてしまえばまったく臭みは感じません。
「フツーに美味い」です。
調理も簡単だしオススメ。

夏場、特に婚姻色が出る時期は味が落ちるとも聞きますが、
それは藻類を多く食べ始めて内臓が苦くなる時期と、繁殖のために卵巣・精巣に身の脂肪を持っていかれるタイミングがピンポイントで重なるからではないかと思います。
それでも十分に及第点の味ではあると思うのですが。

2015年4月19日 (日)

三次元の覇者、の名を冠す二次元の主 ツバクロエイ

2月某日、前々から獲りたかった魚をついに獲った。
わけのわからないタイミングで。
夏秋の魚だと思い込んでいたのに、よりによって2月て。

その魚というのはこれ。ツバクロエイ。




スポーツカイトみたいなシルエットが非常〜にイカす。

ところで、「ツバクロ」とはツバメを指す古語である。
普通のエイはトランプのマークで言えばスペードを想起させるシルエットであるが、ツバクロエイはむしろ横倒しにしたダイヤに近い。体長より体幅の方が大きいのだ。
この常軌を逸したシルエットが翼を広げたツバメを想起させるということだろう。




また、魚体の薄さにも驚かされる。それこそ凧並み。もう完全に砂底に張り付くか、砂上を滑り泳ぐことだけに特化しているよう。
立体的な動きを捨て、ひたすら二次元的な生活を選んだ結果の魚体。

海底という「面」がこの魚にとっては世界のほぼすべてなのだ。

頭上の餌に飛びつくこともあまりないであろうから、上層はそれこそ彼らにとっては「異次元」に近いのかも。
この辺がコチやヒラメやカスザメとはちょっと違う
(もちろん、頭上から襲いかかる外敵や、いい感じに上方を流れ漂う餌もあるだろうから、完全に意識の外にあるということは無いだろうが)

そう考えると、名前の元になったツバメはこの世で最も立体的な機動に長けた生物であるので、この珍魚はまったくの対極にある存在と言えるかもしれない。





余談
こちらもツバメの名を持つナンヨウツバメウオの幼魚。

シルエットはツバクロエイに近い。90度回転するが。
ちなみに、こちらは波間を漂う枯葉に擬態しているため、水面に依存した生活スタイル。こういう偶然も面白い。

2013年5月28日 (火)

カショーロ・ファッコン Rhaphiodon vulpinus

南米にはペーシュ・カショーロ(ポルトガル語でペーシュは魚、カショーロは犬を指すので「犬の魚」という意)
という魚がいます。

その名の通り下顎には肉食獣を思わせる立派な牙が生えていて、
非常に見栄えが良いので日本でもアクアリウム雑誌や釣り雑誌、
時にはテレビでも頻繁に紹介されます。

観賞魚店で幼魚が販売されていることも…。

格好いい魚なので東西の魚好きにとっての憧れの存在です。
僕もその例に漏れず小さな頃から大ファンです。

で、数年前ブラジルのパンタナールへ行った時のこと。
暇さえあれば川で釣りをしていたのですが、やたら釣れまくったのがこの魚。

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カショーロ・ファッコン

地元の人たちはみんなペーシュ・カショーロと呼んでいましたが…。

日本で一般的にペーシュ・カショーロと呼ばれるのは、もっと体高があるHydrolycus属を指すことが多いのですが、
この種類はそれとはちょっと違う
Rhaphiodon属の魚。

現地ではその辺の魚は全部ひっくるめてペーシュ・カショーロ呼びなんですが、
細かく区別する必要がある場合のみ「カショーロ・○○」と具体的な呼称を用います。

ファッコンは山刀のような大ぶりのナイフのことなので、
カショーロ・ファッコンは「ナイフみたいなペーシュ・カショーロの一種」という意味合いになります。

確かに間近で見ると細長くて薄っぺらな銀色の魚体は刃物を想起させます。
体表がデリケートな点や歯が鋭い点も含めてタチウオに通じる雰囲気があります。

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他のカショーロたちと同じく、牙は大きくシャープ。
釣る場合は釣り鈎やルアーの手前にワイヤーを仕込まなければいけません。
釣り糸だと簡単に切断されてしまうので…。
(というかパンタナールやアマゾンにはカショーロやピラニアなど歯が鋭い魚が異様に多いため、ワイヤーの使用は基本。)

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カショーロ・ファッコンは群れで川を回遊しているので、釣れないときはまったく釣れません。
しかし一度群れが回ってくると文字通り入れ食いに。
新品のルアーがあっという間に上の写真のような姿にされます。

たくさん釣れるし見てくれが良いので遊んでもらうのは楽しいのですが、
ヒョロヒョロ、ペナペナの体型ゆえかあまりパワーが無いので、魚のファイトを楽しみたい人には退屈かも。


でも何十匹と釣っていると、この魚特有の珍現象が起こります。

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この写真、どういうことか分かりますかね?

そう、釣り鈎が口に刺さってないんです。
ルアーのフックが牙に絡まって上がってきたんです。
奇跡的。

もう一枚、こんなことも。
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これはどうなっているかと言うと…

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ルアーの金具に牙がガッチリはまり込んで抜けなくなってしまっているんですね(笑)。
寄せてくるまでによく牙が折れなかったものだと感心しました。

こんなことが2回も起こるなんて…
これを応用すれば釣り鈎なしでこの魚を釣る方法が確立できそうですね。
ルアーに金具を取り付けまくるとか、金属素材のメッシュで包むとか…。

そういえばこの魚、たくさんいるんですが食用にするという話は聞きませんでした。
漁師さん曰くおいしくないそうで、釣れてもすべて逃がしていました。

見た目から判断するにひどく不味いってこともなさそうですが、小骨は多そう。
まあナマズやピラニア、コロソマなど文句なしにおいしい魚がうじゃうじゃいる川なので
ちょっとでもマイナス要素のある魚は無理に食べる必要もないのでしょうね。

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ドラード・カショーロという呼称について

ところでこのカショーロ・ファッコン。
日本の観賞魚業界ではドラード・カショーロと称されることがあります。
ドラードとは「金色」という意味なので銀一色のこの魚に付ける名前としては違和感があります。

前々から疑問に思っていたのですが、実際に生息地を訪れてみてボンヤリと背景が見えてきた気がします。

地元の人は皆この魚を「ペーシュ・カショーロ」「カショーロ・ファッコン」あるいは単に「カショーロ」と呼び、
誰一人として「ドラード・カショーロ」などとは呼んでいませんでした。

ところがある時、僕が現地で捕まえた魚の写真を地元の人に見せていると突然
「これはドラード・カショーロという魚だよ」
と驚きの一言が。

思わぬところで、ついにドラード・カショーロの正体が明らかに!
それがこちら!

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……。
パイクカラシンのことだったのか…。

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真のドラード・カショーロの顔。

なるほど。こいつも確かに「カショーロ」を名乗れるだけの立派な牙をもっています。
体色も金色がかっているし、ばっちりと名が体を表している。

これなら納得いきますね。

僕が思うに、この2種は生息地と「カショーロ」の名がもろにかぶっているため、
日本の観賞魚シーンに広く知れ渡るまでにどこかで伝達ミスが生じてしまい、
現在のような混乱を生みだしてしまったのではないでしょうか。

ゴキカブリがゴキブリに~とか、yezoをyedoと間違えてトウキョウトガリネズミに~とか、
そんな間違えははいつでもどこでも頻繁に起こるもの。
ましてそれが日本~ブラジル間の地球を半周する伝言ゲームならある程度は仕方がないとも思います。

今後はネットの発達でそういうミスは起きにくくなり、過去の間違いが少しずつ正されていくのでしょうか?
そうなるといいですね。

2012年2月 5日 (日)

「虫」と「蟲」

現在、僕は「デイリーポータルZ(http://portal.nifty.com/)」というサイトで

生き物に関する記事を書かせていただいているのだが、

読者の方や編集部の方からよく「虫の記事ばかり書いてますね」と言われる。

僕としては昆虫に限らず、色々な動物について特にわけ隔てなく(もちろん多少の偏りはあるが)

書いているつもりだったので、その度に「そうかな?」と意外に感じていた。

そこで先日今までに自分がそのサイトで書いてきた記事を見直し、

各々の記事中でフィーチャーした生き物を分類したところ

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魚類:6記事

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昆虫:5記事

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爬虫類:3記事

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陸貝(カタツムリ):2記事

Dsc05755

クモ、サソリ:2記事

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両生類:1記事

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哺乳類:1記事

という内訳であった。

なんだ、魚の方が多いし、昆虫の記事なんて多い方ではあるけれど全体の4分の1にすぎないじゃないか。

と思ったのだが、あることに気付いた。

…クモとかサソリとかカタツムリも一般的には「虫」扱いされる生き物なのでは…?

僕の頭の中では「虫」といえば「昆虫」を指す語だという勝手な考えが定着してしまっていたのだ。

陸生の軟体動物や節足動物など、諸々の小動物を「虫」と称するのはごく普通ののことであり、その考えに従うと確かに僕が書いた記事のおよそ半分は「虫」を題材にしたものであるといえる。

ところで、そもそも「虫」という字はヘビを表す象形文字で、僕らが普通イメージするような昆虫などの虫を表すものではなかったそうだ。

現在用いられる「虫」という語に近いニュアンスをもっていたのはむしろ「蟲」の方であったらしい。

僕は「蟲」をただの「虫」の旧字体だと思い込んでいたのだが、実は元々は「虫」を組み合わせて作られた全く別の字で、有する歴史はこちらの方が浅いそうだ。

(ただし、現在国内で使用されている「虫」の字はあくまで「蟲」の旧字体扱いである模様。)

で、この「蟲」だが、やはり以前はかなり広い分類群の生物の総称として用いられてきたようだ。

それが現在「虫」が雑多な小動物を指す以上に幅広い。広いどころか動物全般を表す語として使用されていたという。

つまり我々人間も「蟲」に含まれていたのである。

16世紀後期に明で著された権威ある博物学書「本草綱目」によると、すべての動物は

獣のように体を毛に覆われた「毛蟲」、

魚や爬虫類など鱗をまとった「鱗蟲」、

羽をもつ「羽蟲」、

カメやら貝やら、殻や甲羅を持つ「甲蟲」、

人間に代表される丸裸の「裸蟲」

に分類されるという。

しかも驚いたことにこれらの「蟲」にはいわゆる架空の生物も含まれている。

例えば鱗蟲の長には龍(青龍)が、羽蟲の長には鳳凰(朱雀)が君臨している。

(ちなみに毛蟲の長は白虎、甲蟲のは玄武、裸蟲はなんと人間)

当時はこれらの生物も実在のものとして扱われていたのかもしれないが…。

うん。長くなったが何が言いたいのかというと、

「虫」みたいに大雑把に分類できる言葉がないとやってらんないぐらい生き物って言うのはものすごく多様で、そこがまた素敵だねっていうお話でした。

ちなみに「虫」みたいに便利な「ざっくり分類用語」っていうのは意外とたくさんあります。「プランクトン」や「ベントス(底生生物)」とか「微生物」とか。

その辺についてはまた後日書こうかなと思います。

2012年1月13日 (金)

名前はかっこいいのにブサイクな魚

僕は生き物の名前にとても興味がある。

特に、その生き物の特徴を見事なまでに端的に言い当てた名前や、

逆に「どうしてそんな名前つけちゃったの?」と命名者に尋ねたくなるような不似合いな名前に惹かれる。

そんな相反するはずの2つのネーミングパターンを同時に、かつ高次元で実現させた(させられた)生き物がいる。

その名も、「スターゲイザー」

Stargazer8

(画像引用元:http://forum.kapalselam.org/

 

この魚である。

 

ブッサイク。

似合わない。

どう考えても似合わない。「星を見る者」なんてロマンチックでかっこいい名前。

お前絶対デーモンフィッシュとかシーデビルとかそんな感じの名前つけられるべきだっただろ…。

…と、思っていた。命名理由を知るまでは。

 

実はこの魚、上の画像からもわかるように普段は砂の中に潜って身を隠し、上向きについた眼だけを砂上に出して、頭上を通り過ぎる小魚などの餌を狙う習性をもつ。

どうやら命名者にはその姿がはるかな星をじっと見つめているように見えたため、この名を贈ったようだ。

なるほど、そうとわかると途端にふさわしい名に思えてくる。

この魚の形態と生態をシンプルにうまく表すことができている。

しかも「~フィッシュ」とか安直なものでなくちょっと詩的で遊び心が利いているのも良い。

 

もしも将来、僕に生き物に命名する機会があれば、ぜひともこんな風にいかした名前を付けてみたいものだ。

※追記
米国へ留学経験のある釣り船の船頭さんから、ご自身が釣り上げたスターゲイザーの写真をいただきました。

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…上の写真のものとは種が異なるようですが、やっぱ不細工!!

※スターゲイザーの画像は「Star gazer fish」で検索すると面白いものがたくさん見られます。

http://www.google.co.jp/search?hl=ja&rlz=1T4ACAW_jaJP417JP417&q=star%20gazer%20fish&um=1&ie=UTF-8&tbm=isch&source=og&sa=N&tab=wi&ei=_mwPT9PoM66aiAfz-OEt&biw=983&bih=511&sei=BG0PT4n5EYSSiQex18wi